2023/03/19-21
北アルプス
L石井、R宮脇、嵯峨
雪稜歩行
2023/03/19(晴)
新穂高ロープウェイ駐車場10:20 - 12:20白出小屋出合12:35 - 17:20幕営地(p2460地点)
涸沢岳西尾根は、積雪期に最短距離で奥穂へ至るバリエーションルート。新穂高ロープウェイの駐車場から約2時間林道を歩き、「トウヒ」の木を目印に尾根に取りつく。序盤から急登の連続。春山らしいズルズルの雪に足を絡めとられる。テン泊装備も身体に応え、一歩一歩がキツイ。標高200m稼ぐごとに休憩を取る。
幕営適地はp2350〜2460までの間に3箇所。1箇所目の雪原が1番広く、3〜5人テンを3箇所ほどは設営できそう。すでに先客パーティが2幕設営していたため、我々はさらに上を目指す。2箇所目は、整地すれば2人テンを1つ張れるくらいのスペース。ここにも先客が。この先まだ適地はあるのか?不安を抱えつつ、祈りながら重たい足を上げる。
17時を回ってたどり着いた2460地点。そこには既に整地済みの、しかも手持ちの3-4人テンがピッタリ収まるスペースが用意されていた。安堵!森林限界を抜ける急登の、1歩手前。ここが最後の幕営適地であった。
2023/03/20(晴)
幕営地(p2460)4:40 - 5:40蒲田富士 - 7:20涸沢岳7:30 - 7:50穂高岳山荘8:20 - 9:00奥穂高岳9:40 - 10:30穂高岳山荘10:40 - 11:00涸沢岳ー12:30 - 13:10幕営地(p2460地点)
翌朝、3時に起床。風もなく暖かい。30分と歩かぬうちに樹林帯を抜ける。朝日に照らされる西尾根のナイフリッジ。右手には凛々しく聳え立つジャンダルム。左手には厳つい滝谷、北穂、徐々に頭を出してくる槍ヶ岳。一瞬一瞬、陰影が強くなるたびに迫力が増す、穂高劇場。
涸沢岳を越え、穂高岳山荘に下って休憩。冬期小屋入口は完全に埋まっており、掘り起こすには時間がかかりそうであった。
時間には余裕があったので、予定通り奥穂高を目指す。浮石混じりのミックス帯を慎重に登り、山頂へ。表銀座がずらり。その奥に裏銀座がずらり。春霞はなく遠望も抜群で、中央アルプス、富士山や浅間山までくっきり見える。360度の大パノラマを、3人で貸切り。なんと贅沢!夏場はいつも人で溢れている奥穂を独占できるなんて、これぞ冬の醍醐味だ。風も穏やかで快適なので、しばし山頂に留まって撮影会。
下りは要所要所でクライムダウンしながら、ロープは使わずに降りる。緩く滑りやすい雪がついたミックスに、自分と嵯峨はかなり神経を使った。一方石井は流石、慣れたもので、手足の置き場を上手く捉えて何食わぬ顔で降りてくる。
蒲田富士からの長い急斜面の下神経をすり減らす。頼りない細軽ロープがfixされているが握ったところで手袋の中を滑っていくであろう。自分はピッケル一本だったが、ダブルアックスの方が安心。状況によっては懸垂しても良いかなという感じ。
予定よりだいぶ早くテン場に戻った。その日のうちに下山してしまうこともできそうだが、撤収してから下り始めると駐車場着は18時を回るだろう。気温が高く雪もだいぶグズついている中、また疲れもある中で、急斜面を焦って下る気にはならない。下山は翌朝と決め込み、のんびり昼寝。
2023/03/21(晴)
幕営地(p2460)4:30 - 6:45白出小屋出合 - 8:30新穂高ロープウェイ駐車場
たっぷりと睡眠をとって疲労回復。3日目は少しでも雪が硬いうちにと、ヘッデンをつけて4:30に下山を開始する。期待したほど雪は締まっておらずアイゼンの効きもイマイチであったが、太ももの筋肉を酷使して先頭の嵯峨を追いかけ、登りの約半分の時間で林道まで出た。
下山後、10時オープンの新穂高の温泉に1番乗り。奥穂山頂同様、貸切りだった。
今回もルートは登攀要素はなく技術的な難易度は低いものの、体力的強度はなかなか高く、要所要所での緊張感もある。過去に滑落や遭難も多く、決して油断ならない。3人でこのルートを歩き奥穂のピークまで踏めたことには、大きな達成感があった。手際よく山行を仕切ってくれたリーダーの石井、持ち前の体力で先頭を歩き続けてくれた嵯峨に感謝。
冬季に涸沢岳西尾根が登られるのは、沢筋を避け雪崩を回避するためと言われている。が、アプローチの林道では3箇所ほどデブリを超えた。尾根上も所々急峻で雪が滑りやすく、雪崩は十分に警戒すべきと感じた。
記:宮脇