一ノ倉沢:衝立岩中央稜、烏帽子岩奧壁変形チムニー

日程

2022/05/28-29

山域

谷川連峰

メンバー

L桂野、坂本

目的

アルパインクライミング

行程

2022/05/28(晴曇)
23:30一ノ倉沢出合4:14 - 5:20中央稜取り付き5:45 - 10:50衝立の頭11:20 - 13:45ピナクル14:00 - 17:30一ノ倉沢出合

約1年前の一ノ倉沢烏帽子岩南稜で頚椎症を発症してから山歩きやアルパインクライミングを休止していたが、症状が回復傾向にあるため、復帰戦として桂野が計画していた山行に便乗することとした。
前夜初で東京を出発し、22時頃谷川岳インフォメーションセンターの駐車場に到着。
混み合うことを想定し、そのまま一ノ倉沢出合まで移動し仮眠を取り、4時すぎに行動を開始した。
前日夜まで雨が降っていたためか、パーティーは我々のみ。
一ノ倉沢出合からテールリッジ基部までは雪渓通しで歩くことができ、出合から中央稜取り付きまで1時間ほどで到着した。
深夜から風が強かったためか、岩は完全に乾いている。
早速ギアを準備し、奇数ピッチは桂野、偶数ピッチは坂本がそれぞれリードすることとしてクライミングを開始した。

1P(Ⅳ):スラブ~フェース
2P(Ⅱ):ルンゼを直上
3P(Ⅳ):2Pチ終了点から右にトラバースから凹角を直上
4P(Ⅴ):フェースからチムニー(上部はチムニーを登るのが一般的とのことだがチムニーが濡れていたため左のフェースを登った)
5P(Ⅲ):凹状フェース
6P(Ⅲ+):ルンゼ
以降「新版 日本の岩場(上)」では土のルンゼ~草付(Ⅱ)100mと記載があるが、3Pに分けて登り衝立の頭へ。

衝立の頭で景色を楽しみながら小休止し、北稜を経由して下山を開始した。
ピナクルまでは6回の懸垂下降で降り、衝立前沢までは雪渓が残っていたためアイゼンを装着。
この雪渓は滑落したら大怪我では済まない斜度で、坂本は12本歯のアイゼンだったため問題なかったが、桂野は軽アイゼンのため時間を掛けて傾斜のゆるい箇所までクライムダウンしながら降りるなど細心の注意を払い雪渓を通過した。
衝立前沢を下降開始するものの、事前に他の山行記録で見ていた衝立前沢より水量が多いことや、シーズン初めのためか沢が荒れてかなり悪かったことから、下降ルートが正しいのか不安になり、桂野と相談しながら上り返してルートを確認するなど、右往左往することとなった。
結局ピナクルから一ノ倉出合まで3時間半もかかってしまい、この日の最大の核心となった。
この季節の北稜経由での下降をする場合は前爪のあるアイゼンとピッケルは必須装備としたい。

2022/05/29(晴)
一ノ倉出合4:20 - 変形チムニー取付6:00 - 登攀開始 7:00 - 終了点14:30 - 引き返しポイント16:00 - 懸垂点(終了点と同じ)16:30 - 南陵6ルンゼ下降点17:30 - 南陵テラス18:30 - 出合20:10

周知の事だが、6月末くらいまでは一ノ倉は雪渓が残っていてアプローチが楽であり、登攀適期である。以前より、5/28-29でまず一ノ倉合宿を実施し、6月は天気の良い土日は全て一ノ倉という予定にしようと坂本と合意しており、5/28に衝立岩中央稜、5/29に烏帽子岩奧壁変形チムニーを計画した。この記録は、本合宿での変形チムニーのほうの記録となる。

朝3時半に予定通り起きて準備をして出発するが、三々五々とすでにクライマー達は出立していく。一ノ倉の朝は本当に早い。4時20分に出るが、既に快晴であり、気持ちのいい朝だ。一ノ倉は雪渓があるとテールリッジまでは本当に早く到着できる。少し呼吸が速くなる程度の負荷で30分ほど。早速テールリッジを登っていくがこれも正直特筆すべきことは無い。ただただ坂本が速いだけである。6時にはあっという間に変形チムニー取付きである。

4パーティ目とのことなので、ゆっくりと順番待ちをする。その間に上から何やら金属音を伴う落下物が・・・。それを追うようにクライマーが懸垂下降してくる。聞くとATCを落としてしまったので山行中止との事。もったいない。これは他人ごとではないので肝に銘じようとのことで坂本とコンセンサスを取った。そうこうする間にクライムオン。今回は核心が奇数ピッチなので1ピッチ目は坂本から。その後のクライミングの様子は以下。

○1P 坂本 階段状フェース(Ⅲ)何という事はないⅢのフェース。少しランナー少ない。

○2P 桂野 階段状フェース(Ⅲ、トポ1P後半)何という事もないⅢのフェース。ランナウトしまくって怖い。

○3P 桂野 左上フレーク→右に回り込むフェース(Ⅴ、トポ2P)小フレーク交じりの左、ホールドスタンスに乏しい中央、濡れた凹角の右、の3つの選択肢があったが、坂本が中央と右にトライし、断念。「我こそはというのはないのか?」との坂本の一言に「左なら」と。「それこそムリじゃね?」の指摘に、「オレはA0を前提としてなんとなく行けそう」と返答。という訳でなんと坂本の代打で桂野登攀。一部アンダーのフレークを使ったフリーっぽいムーブあったもののA0を交えてまあまあ余裕はないものの何とか突破。しかし、はがれそうなフレークを持ってミシっと音がしたり、シビれる瞬間もあり。核心を超えた後はまたⅢのランナウトするフェース。

○4P 坂本 変形チムニー(Ⅳ+、トポ3P)世に知れた変形チムニー。坂本がステミングでじっくりとトライ。問題なく登攀。途中、カムを有効活用。桂野は抜け口でちょっと時間かかりそうだったので遠慮なくゴボウ。時間優先。

○5P 桂野 カンテ状(Ⅳ+、トポ3P)先行パーティの邪魔をしたくないのでチムニー直後でピッチを切った関係で追加で発生。何という事もないカンテ。

○6P 桂野 トラバース(Ⅱ、トポ4P)ランナーほぼなし。簡単だが精神力必要。

○7P 坂本 ルンゼ~チムニー(Ⅳ、トポ5P)カムを有効活用し、じっくりと攻略。

○8P 桂野 階段状フェース(Ⅲ、トポ6P)またしてもランナウトのフェース。

○9P 坂本 コーナークラック(Ⅴ、トポ7P)垂壁を超えてコーナークラック。最初の垂壁はホールドを探るとガバが見つかるが、桂野は時間かけたくないのでA0でホールド探して強引に突破。その後のコーナークラックが面白い。ここはもったいないのでついつい何も掴まずに桂野もノーテンで登った。しかし、ここにしっかりフリーでカムを決めながらオンサイトする坂本に改めて畏敬の念を抱いた。

○10P 桂野 スラブ左上~凹角(Ⅳ、トポ8P)まさかまたランナウトしないよなと思いつつトライ。流石にⅣでのバカみたいなランナウトはなく、常識的な範囲で残置ハーケンあり。問題なく突破。

○11P 坂本 草付き凹状フェース(Ⅲ、トポ9P)簡単だがこれまたランナウトするフェース。トポだと40mだが、もう少し長く感じた。

結局、28日13時間行動、29日17時間行動で、極端にハードな一ノ倉合宿となった。

記:坂本、桂野

過去の山行記録