2022/03/19-21
上高地、乗鞍岳
L加藤智、望月
アイスクライミング、雪山登山
2022/03/19(晴時々薄曇)
11:30 善五郎の滝駐車場 - 12:30 善五郎の滝 12:40 - 13:00 善五郎の滝駐車場 - 14:00 善所の滝 14:30 - 終了
今シーズンのアイス納めとして中千丈沢へ向かった。初日は上高地方面へのアプローチメインだったため、乗鞍の善五郎の滝を偵察。予め得ていた情報では滝はすでに流心を露出して危ない状況だったため、鼻から登攀目的ではなく、来シーズンの偵察であった。
噂通り、滝は登れる状態ではないので眺めるだけ。
駐車場からは徒歩で20分くらいとアプローチがよく、高さもそこそこあり面白そうな滝ではある。来年の宿題とする。3本滝へはアプローチにスキー場リフトを使う必要があり、面倒となったので上高地方面に向かう途中の善所の滝を偵察。この滝は水量が多すぎて氷結は期待できなさそうではあった。帰路、宮脇から負傷の連絡が入り、翌日の山行を日帰りへ変更とする。そうなると、用意した食材を食べ尽くそうと、そのまま沢渡まで行き、素泊まり3500円の安宿へ投宿。調理器具を借りて鍋に舌鼓を鳴らす。我ながらうまい味だ。満腹となり幸せな気分。根っからの貧乏性からか、安宿の方がよく眠れるから不思議だ。
2022/03/20(晴時々薄曇)
7:00 釜トンネル - 8:00 大正池ホテル - 8:20 中千丈沢出合 - 11:00 Z の滝取り付き - 11:30 Z 13:00 -13:00 一角獣偵察 15:15 大正池ホテル - 16:15 釜トンネル下
本番の日。
朝イチで坂巻温泉へ向かうも昨晩の段階で駐車場は満杯。一台も停めることができず、トンネルを2つ沢渡方面に戻って路駐。釜トンネルを歩く。
中千丈沢までは夏道一般道だが、ところどころ氷結していて滑りやすく注意しながら歩く。
中千丈沢に入るとすでに数パーティが歩き出している。我々も先頭パーティへついて歩く。二股で先頭パーティが一度右股を進み、戻ってきて左股のルンゼに取り付く。それをみて躊躇なく左股ルンゼへ続くが、ここからがかなり悪かった。ハーネスをしていけば良かったが、徐々に強くなる傾斜に茹でガエル状態で気づくと立っているのがやっとのほどの雪壁となる。滑落は許されない。先頭パーティもルートがわからないらしく右往左往している。左岸尾根の木に懸垂用残置スリングが見えたので加藤がそこまで上り状況を偵察。右股側へ懸垂することにする。ここでハーネスを装着し準備をしようとするが痩せ尾根で居心地がわるく、誤ってバーナーなどを入れたケースを今まできたルンゼに落とす。ラークの掛け声も虚しく、ケースはあっという間に視界の彼方へ転がっていってしまった。なんとなく嫌なムードだったが、たまたま後続パーティが知り合いでケースを拾って持って上がってくれた。その後続々と人が上がってくるが、みんなルートがわからず狭いエリアに立ち往生。
望月にも痩せ尾根まで慎重に上がってきてもらい、真後ろのパーティのロープと連結して60mを同時懸垂。
一筋縄ではいかないアプローチに疲弊した。
そこから200mほど上がった所からが中千丈沢の真骨頂。左岸にはハバネロ、ゼット、一角獣、ジョーズと見栄えのする氷瀑が続いている。とりあえず看板ルートのZを覗くと、だれも取り付いていない。
2p目の氷柱がすでに細くになり、真ん中あたりに亀裂が入っているようにも見えるがここは行くしかないと登攀準備を整え、トップ加藤、セカンド望月でZに取り付く。
1ピッチ目はⅤ級と聞いていたが、難なく突破。その後10mほどの雪壁をランナウトに耐えながら、2p目取り付きまで登り、スクリューで支点を構築。セカンド望月を迎える。2p目。Ⅳ級と聞いていたが、遠目で見るより氷柱はか細く、奥行きもないハリボテ状態。
無理せずにスクリューを頻繁に打ちながらエイドしていこうと望月と相談し、2p目をスタートする。
安定した場所からスクリューを2本決め、いよいよ核心の亀裂部分に侵入。これ以上割れないように恐る恐るバイルを打ち込み、安定した姿勢を探すが足元が丁度氷柱のくびれ部分となり、足の置き場が限定されバランスが取りにくい。
まずはスクリューを決めてセルフを取ってからゆっくり考えようと、左に決めたバイルにぶら下がり、スクリューを回し始めた瞬間に、氷が壊れたか、バイルがすっぽ抜けたかわからないがフォールした。一瞬何がなんだかわからなかったが、氷瀑に刺したままの右手のバイルにリーシュをかけていたスリングが千切れたままかろうじて垂れ下がり、墜落の衝撃を物語っている。墜落時に左手を強打したためか、グローブの薬指部分が破れていて、あとから痛みがじわじわと伝わってくる。落下距離は4mくらいか。スクリューが抜けたのかと思うほどロープが流れたが、スクリューはしっかり刺さっており、望月が上手くロープを流してくれたようだ。上に引かれた望月と同じ高さまで落ちていたので、まずはビレイ点まで戻り、セルフをとって落ち着く。破れたグローブを恐る恐る外すと、左手の薬指は紫色に腫れ上がり、見るからにヤバそう。「困ったな」。が正直な感想だった。2人とも徐々に落ち着きを取り戻し、冷静に対処法を考え直す。左手の感覚が徐々に戻るとなんとか曲げ伸ばしはできそう。望月のバイルを借りて、墜落した地点まで登り返し、スクリューをうち足してバイルを回収。慎重にクライムダウンを交えてスクリューも回収した。
氷柱の裏側に回りロープを一周ぐるりと回して懸垂下降支点として取り付きに戻る。
もう一度グローブを外すと、心なしか腫れが治まっている。どうやら内出血による腫れで、出血に伴い腫れがひいたみたいだ。時間も時間だし、他の氷瀑はどこも混雑していたので、上部の一角獣とジョーズの取り付きまで見学に行き、撤収とした。
その日のうちに帰ろうと中千丈沢から一度松本に向かうが、せっかくの3連休、松本まで来たのに2日で帰るのは休みも交通費ももったいない。もう1日滞在し、乗鞍岳ピストンを計画。松本から沢渡の安宿へとんぼ返りし、翌日に向けて快眠。
2022/03/21(晴時々薄曇)
8:30 第3駐車場 - 9:20 かもしかリフト上 - 11:30 チェックポイント - 13:45 第3駐車場
単なる登山では勿体無いのもあり、朝、観光センターでスノーシューを借りて、来シーズンの北海道アイスに向けてスノーシューでの登攀訓練をする。(北海道アイスは雪が深く、アプローチにはワカンでは太刀打ちできない)。望月は初めてのスノーシューでうまく歩けず足が痛いようだ。
スキー場第三駐車場からリフトを2つ乗り継ぎ、スキー場最上部からの楽ちんスタート。リフトの始発に合わせたせいで、多くのBC客と一緒に登り出す。
乗鞍は山体が大きくアップダウンはなくひたすら単調な上り基調。天気はおおむね晴れていたが、山頂付近は、時折雲がかかり、視界が見えなかったりめくるめく変化している。 時間の余裕もなくなり、視界不良の中の下山はリスクが高いと判断し、11時30分の時点で引き返した。
帰りはリフトを使えないのでスキー場をひたすら下山する。久々にゲレンデで遊びたい気持ちに駆られた。
記:加藤智